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1章のまとめ

人の声を伝えるための電話網で、デジタル信号によるコンピュータ通信が試みられるようになったのは、今から50年も前のことである。わが国では、1980年代半ばにコンピュータ通信に対応するネットワークの完全なデジタル化が実現したが、さらに高速で高品質の通信を行うため伝走路の光ファイバー化が進められている。90年代には、各国で高速通信網整備が主要産業政策として打ち出され、国を挙げた取組みがなされるようになった。90年代にはまた、米国で発達したインターネットが民間に開放され、通信網を介した大量のデータのやり取りが個人レベルでも行われるようになり、ニーズの高まりとともに高速通信網整備に拍車がかかっている。

また、各国で通信網整備の一環として打ち出された自由化策や規制緩和策が、国内では通信事業への参入を促進し、国外では大規模通信事業者によるメガコンペティションヘと発展している。競争はサービスの多様化と料金引き下げを可能にし、同時に遠隔医療や電子取引等のアプリケーションの多様化や高度化も進める。日本では、事業者の参入によるサービス競争で、携帯電話の加入料や通信料は相次いで引き下げられ、96年度は1年間に1000万を越える加入者が予想されている。

通信網の高速化と並行して、映像品質の向上をめざした放送のデジタル化も進められた。次世代テレビと呼ばれるこの技術は衛星デジタル放送として実現し、欧米やアジアで多チャンネル放送が開始されている。デジタル多チャンネル放送の開始で危機感を抱いたCATV事業者は、ケーブルによって映像を伝送するネットワークの特徴を生かし、通信事業に進出を始めている。電話線の数百倍も早い既存の伝送路を用いて、格安でインターネットサービスを行うことができる。

通信の世界は急激な技術革新により、今後さらに高度化し多様化していくことが予想されている。地上では光ファイバーが張り巡らされ、宇宙空間には多数の通信衛星がひしめき合い、天と地の間で大容量の情報が飛び交う時代を迎えようとしている。国籍や国境を越え、いつでもどこにいても通信したい相手と接続でき、家庭から安価に各種のサービスが得られる時代が、既に手の届くところに来ている。

 

 

 

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